第654章 帰国

夜の帳が下りる中、背の高い木々が幽鬼のように枝を揺らしていた。

 原田麻友は手首を軽く返し、せいぜつをひと振りする。ひやりとした光が走った。

「それは、あなたが出すもの次第ね。私が見逃すだけの価値があるかどうか」

 玄誠子は、してやったりと笑う。

 修行者で、神隠しを望まない者などいない。正道を修めるために。

 ――一時間後。

 玄誠子は喉をからしながらも、表情だけは妙に得意げだった。眉を躍らせ、原田麻友を見上げる。

「どうだ? これだけ出せば、さすがに放してくれるだろ。全部、神隠しのやり方だぞ?」

 原田麻友は答えない。その代わり、玄誠子の背後にある山小屋――そこに張られた...

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