第691章 しまった、しまった

「法子! お母さん、びっくりしたのよ!」

「法子、大丈夫!? どこか具合悪くない? 私が誰だか、わかる?」

「従姉ちゃん、やっと起きた!」

「法子……」

「先生、本当にありがとうございます! ありがとうございます! 市川家では、どうお礼をすればいいのか……」

病室は声が飛び交い、妙ににぎやかだった。

市川法子は目を覚ましたばかりで力も入らないのに、家族の言葉へ一つずつ返していく。

そして視線だけで病室を素早く一周させた。

「翼は?」

ずっと、早く自分の身体に戻れと急かしてきたのに――今、ここにいない。

さっきまでの喧騒が、嘘みたいに途切れた。

市川家の面々は、誰も法子の...

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