第692章 食べ物

「原田先生、お帰りなさーい! さっき少し多めに作ったので、原田先生も食べてみてください」

菅原杏奈が弾んだ声で原田麻友に声をかけた。

原田麻友が彼女と顔を合わせて以来、こんなに嬉しそうな表情を見たのは初めてだった。

麻友はダイニングチェアに腰を下ろし、テーブルに置かれた黒い“何か”を見て、それから両手を合わせて無言で祈りはじめている山口理沙に視線を移した。

「私が作ったスープです。簡単なお味噌汁」

味噌汁が、卓上に置かれる。

器の中は濃い紫色の汁。ぐつぐつと泡まで立っていて、その上に黄色い卵の花と、刻みネギの緑が散っている。

色味も具材も、普通の味噌汁と大差ない。――ただし。

...

ログインして続きを読む