第693章 原田渉の婚約

リビングはやけに賑やかだった。

二品一汁の献立は、山口理沙たちの争奪戦の末、あっという間に皿まで空になった。

残ったのは、呆然と立ち尽くす“生きている人間”の一団だけ。

中川菜々美は飲み干した椀を両手で抱え、空っぽの底をじっと見つめたまま、情けない目で菅原杏奈を見上げる。

菅原杏奈はさっきの奪い合いが衝撃だったのか、目をぱちぱちさせて言った。

「……ほんとに、おいしいと思ってるの?」

「うまいうまい!」

山口理沙がすうっと近寄り、菅原杏奈の目の前にしゃがみこむ。上目遣いで、いかにも可哀想そうに。

「杏奈、幽霊がどれだけ惨めかわかってないよ」

「霊香はいい匂いだし、腹も満たさ...

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