第727章 彼女は原田日菜だ

「……しゃべりなさいよ!」

原田日菜が怒鳴りつける。

声がトイレに反響して、やけに大きく聞こえた。

受話器の向こうで、鼻で笑う気配がした。

「何を言えって? せっかくのチャンスが目の前に転がってるのに、お前は大事にできないんだな」

「最高の流れだったのに、こんなふうに潰してさ」

「……それで、どうしろってのよ」

日菜が息を吐く。

「1億、用意しろ」

「……は?」

日菜の動きが止まった。

「いくらだって?」

「1億だ」

さっきまで床にへたりこんでいた日菜が、勢いよく立ち上がる。

「ふざけないで! 吹っかけすぎでしょ、1億って! そもそも、あんたのほうから近づいてきて...

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