第75章 想像もできない世界

原田麻友は祭壇の前に立ち、少し離れた石碑を見つめていた。

彼女が手を上げると、二本の指の間に呪符の紙が一枚現れ、口の中で何事かを静かに唱えた。

呪符の紙は瞬く間に燃え尽き、香案の上の線香と蝋燭に素早く火が点った。

線香と蝋燭が燃え始めると、それまで微かに揺れていた風が、まるで目に見えない力に制御されたかのようにぴたりと止んだ。

木の葉は揺れを止め、虫や鳥の鳴き声も次第に消えていく。

周囲で見守っていた者たちは皆、迫り来るような圧力を感じた。

わけもなく心臓の鼓動が速まり、呼吸が苦しくなる。

「お姉ちゃん、どうしたの?」中川菜々美は、先ほどから目が赤くなったり黒くな...

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