第775章 手をつないだ

田村亮太がオフィスを出ると、秘書と助手が何人か寄り集まって、ひそひそと何か話し込んでいた。

軽く咳払いをする。

……誰も気づかない。

仕方なく、もう少し大きく咳き込む。

それでも、誰も振り向かない。

田村亮太「……」

秘書も助手も、ふだんは一分の隙もないほど仕事のできる連中だ。職場で私語の輪を作るなんて、まずあり得ない。

亮太はゆっくり近づき、首を伸ばして輪の中心に置かれたスマホを覗き込んだ。

「なにっ、麻友が会社に来たのか!」

思わず声が漏れる。

「会長?」

「会長……!」

秘書と助手が慌てて散り、半歩下がって顔を見合わせた。

だが亮太は気にも留めず、業務用グルー...

ログインして続きを読む