第803章 悲惨な死

ボロい団地の廊下に、部屋の中の会話がはっきり漏れていた。

「母さん、まだ原田日菜を引き取れてないの? あいつが戻ってくりゃ、うちらも豪邸に住めるし、高級車だって乗れるだろ」

「兄貴の言うとおり。メディアからも電話が何本も来ててさ、取材したいって。金まで出すってよ」

「あの女が帰ってくりゃ、うちの暮らしも上向く」

家族は声を弾ませ、未来を勝手に描いている。

玄関前に立つ原田日菜は、鼻で笑った。

隣にいる梶岡礼奈へ顔を向ける。肩が触れそうな距離なのに、見えるのは礼奈の目だけだった。ほかは何も、闇みたいなマントに呑まれている。

「……あいつら、片づけられる?」日菜は歯を食いしばった。...

ログインして続きを読む