第814章 滅魂の陣

夜。

闇がずしりと沈み、空気まで重たい。

原田日菜はマンションの正門を、釘を打ちつけたように睨み続けていた。片手のパンを何口もかじり、脇に置いた水を口に直接あおる。口元から垂れた水滴を、行儀も気にせず手の甲でぐいっと拭った。

「梶岡礼奈……逃げ切れると思うなよ。一生、隠れてみせな」

「よくもあたしを騙したね!」

そのとき、見覚えのある高級セダンがマンションから出てきた。

日菜の目が、ぱっと光る。ためらいなくエンジンをかけ、ぴたりと後ろに張り付いた。

「後ろ……原田日菜みたいね」

梶岡礼奈がルームミラーを覗く。

車内には、運転席の彼女以外、誰もいない。なのに――声だけが、そこ...

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