第816章 この一点だけで

目の前で、虚実ないまぜの幻がすうっとほどけて消えた。

滅魂の陣を満たす血の霧は、とうに「霧」という域を越え、実体を帯びている。ぎっしりと怨霊を巻き込みながら、ただ一人の生者――原田麻友へ、一斉に襲いかかってきた。

システムは霊台で早くから跳ね回っていた。

【取るに足らない真相のために、自分の命を投げるのか?】

原田麻友は背筋を伸ばし、剣を抜く。

【愚かなまま生きるより、分かった上で死ぬ。私は、分かった上で死ぬ方を選ぶ】

薄暗い偏殿を一巡するように視線を走らせ、陣の中で牙を剥く怨霊の群れを見据えた。

せいぜつの刃がひゅ、と揺れる。凍てる光が奔り、澎湃たる霊力が一気にせいぜつへ流れ...

ログインして続きを読む