第82章 田村会館

田村家。

中川裕大は車を田村会館の外に停めた。

彼は振り返って後部座席の原田麻友と原田美紀子を一瞥した。「麻友さん、このまま入るんですか」

原田麻友がドアを開けて車を降りると、原田美紀子もその後に続いた。彼女もまた、田村会館の固く閉ざされた正門を前に、心中少しばかり不安を覚えていた。

田村家は帝京で赫々たる名声を誇る、由緒正しい名門である。

帝京四大家門の中でも、田村家が最もその歴史は深い。

原田麻友は唐草模様の鉄門の前まで歩み寄り、呼び鈴を押した。ほどなくして、詰襟服を着た五十代ほどの男がやってきた。「失礼ですが、何か御用でしょうか」

原田麻友は言った。「私は原田麻友です。田...

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