第2章 メディアの露出

その時、外から突然騒がしい声が聞こえてきた。メディアの記者たちはすでにホテルの外で張り込んでおり、この秘密の出来事を暴こうとしていた。

「バン！」ホテルのドアが開け放たれ、記者たちが殺到した。フラッシュが絶え間なく焚かれ、二人にカメラが向けられた。

「藤原社長、鈴木家のお嬢様と付き合うとお聞きしましたが、取材させていただけませんでしょうか？」

「消えろ！」藤原圭は顔色を変え、怒りに燃えた目で叫んだ。鈴木瑠璃への信頼は一瞬にして崩れ去った。

「圭、どうして記者たちがここを見つけたのか分からないの」鈴木瑠璃は慌てて顔を隠し、不安に満ちた声で言った。

「笑わせるな！この茶番劇はお前が仕組んだ証拠だ！」藤原圭は冷たく振り返り、鈴木瑠璃の存在を完全に無視した。この場から逃げ出したい思いに駆られていた。

実際、彼はそうした。

「二度と俺の前に現れるな」藤原圭は服を整え、記者たちの質問を無視したまま出口へと向かった。

記者たちは興奮して彼を取り囲み、フラッシュが部屋全体を照らし出した。鈴木瑠璃は無力にその光景を見つめ、心は絶望に満ちていた。「圭……」

藤原圭の後ろ姿はフラッシュの光の中でより一層冷たく見え、部屋に一人残された鈴木瑠璃の頬を涙が伝った。

藤原家はＳ市の名門で、学者の家系でもあった。藤原お爺さんは固い人で、この件を知るや否や、藤原圭と鈴木瑠璃の婚約を即座に対外発表した。

十歳で藤原圭に出会った日から、鈴木瑠璃の心には一つの種が植えられていた。

この十二年間、藤原圭の足跡を追いかけるため、彼女は必死に自己研鑽を重ねた。それは彼を一目でも多く見たいという思いからだった。

今、彼と結婚できることは鈴木瑠璃にとって夢のようだった。しかし、それは決して甘い夢ではなかった。

なぜなら、藤原圭は彼女を愛していなかった。むしろ嫌悪し、憎んでいた。彼女の存在によって、深く愛していた女性―彼女の姉である鈴木蛍を裏切ることになったからだ。

結婚して三ヶ月、藤原圭は一度も優しい顔を見せてくれなかったが、鈴木瑠璃はそれでも甘んじて受け入れていた。子供の頃のように優しい藤原圭を夢見て、いつか心変わりして自分を愛してくれることを想像していた。

しかし、夢想はあくまでも夢想でしかなかった。

鈴木瑠璃は結局、藤原圭の愛情を手に入れることはできなかった。気分の せいかもしれないが、この数日体調も優れなかった。

そこで鈴木瑠璃は一人で病院を訪れた。

検査室に座る鈴木瑠璃に、妊娠の知らせが波のように押し寄せてきた。幸せと喜びに満ちた笑顔を浮かべながら、未来への想像を膨らませていた。「わたし、本当にお母さんになるのね！」彼女は小声で呟き、期待に胸を膨らませた。

しかし、急いで藤原圭に電話をかけても、冷たい着信音が響くばかりだった。

藤原圭からの応答はなく、焦りと無力感が彼女を包んだ。

「きっと忙しいのね」鈴木瑠璃は独り言を呟きながら、その喜びと期待を一人で抱えるしかなかった。

夜の帳が下りる頃、鈴木瑠璃の胸に冷たいものが走った。今夜も藤原圭は帰ってこないのだと悟った。

結婚して三ヶ月、彼は一度も家に泊まることはなく、鈴木瑠璃は毎晩一人で空っぽの寝室を守っていた。彼が毎晩どこで過ごしているのか、実は鈴木瑠璃にはわかっていた。

鈴木瑠璃は風呂を済ませ、お気に入りの黒いシルクのパジャマに着替え、休もうとした時、突然ドアが「バン」という音を立てて乱暴に開けられた。

彼が部屋に足を踏み入れ、鈴木瑠璃の姿に目を留めると、眉をしかめた。

「また俺を誘惑するつもりか？」彼は冷たく言い放ち、その瞳には一片の温もりもなかった。

鈴木瑠璃は一瞬凍りついた。胸の期待は一気に消し飛んだ。

「圭、違うの……」彼女は慌てて説明しようとし、頬を薄く染めた。