第28章 元カレ

あまりにも馬鹿げている。藤原圭が最初から最後まで好きだったのは鈴木蛍だけ。

では、鈴木瑠璃は何だというの?!

あの夏は何だったの?!

夕陽の中を背負って歩いてくれた少年は何だったの?!

「瑠璃ちゃん、君と出会えたことは、僕の人生で一番幸運なことだよ。君のことが大好きだ」少年はそう言った。

久美子の言う通りだ。男の口から出る言葉なんて、全て嘘ばかり。

この瞬間、鈴木瑠璃は胸が締め付けられるような痛みを感じた。心の痛みだけではない。体内の致命的な腫瘍まで、どうしたことか突然激しく痛み出した。

この胸を刺すような光景にもう耐えられない。鈴木瑠璃は立ち去ろうとした矢先、誰かと正面からぶ...

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