第35章 詐欺

鈴木蛍を弁護するため、藤原圭は精神病院に電話をかけた。

「貝塚博という老人が失踪しているということはありませんか?」

「いいえ、ベッドで寝ていらっしゃいますよ」

一言一句がはっきりと耳に入り、鈴木瑠璃の全身の血が一瞬で凍りついたようだった。

藤原圭は更に尋ねた。「お年寄りの最近の体調はいかがですか?」

「この患者さん、精神面の問題以外は元気ですよ」

「分かりました。ありがとうございます」

「あの」看護師は一瞬言葉を切り、続けた。「先ほど失踪とおっしゃいましたが、確かに一時期姿を消していたんです。ただ、孫娘に隠れんぼをしようと言われたそうで」

この話を聞いて、鈴木瑠璃にはすべて...

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