第268章

 河野由貴はからかうように言った。

「おじさん、やっぱり口が上手いね。大平愛子とは大違い」

 それを聞いた大平愛子は由貴を睨みつけ、すぐに言い返す。

「ちょっと河野由貴、あたしがなんだって言うのよ?」

 洞窟の中は、女たちの笑い声で満ちていた。まるで賑やかな喜劇の一幕のようだ。温暖な空間で、彼女たちは互いに軽口を叩き、ふざけ合いながら、この過酷な環境での鬱憤を晴らしている。

 やがて日が落ち、外では寒風が唸りを上げ始めた。

 談笑に疲れたのか、一人、また一人と夢の世界へ落ちていく。

 喧騒が去った洞窟には静寂が戻り、陶器の鉢の中で爆ぜる木炭の微かな音だけが残った。一酸化炭素中毒...

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