第515章

 おれは必死に最後の理性をつなぎとめようとして、ぶんぶんと頭を振った。頭の中にあふれ出す、甘くて淫らで、どこか制御不能な光景を振り払おうとする。けれど本田安奈が近づいてくるたび、ふわりと香る甘い匂いが鼻先をかすめて、身体の中の熱はますます燃え上がった。理性の防波堤が、今にも崩れ落ちそうになる。

 その瞬間、本田安奈が何かに気づいたように、びくりと肩を震わせた。瞳に一瞬、はっきりとした怯えの色が走り、思わず一歩、後ろへ下がる。

 彼女の視線は、地面に転がる食べかけのキノコの残骸に吸い寄せられていた。次の瞬間、彼女の顔からさあっと血の気が引いていく。

「海老原和生、このキノコ……本当に毒と...

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