第546章

おれは大平愛子に背を向けたまま、手を伸ばした。指先が、ふいにあいつの柔らかくてつるつるしたふたつの胸をとらえる。ことばなんかじゃとても言い表せない、溺れそうなくらいの心地よさだった。

「っあ!」

 大平愛子がびくんと震えて、小さく悲鳴を上げる。おれはあわてて手を引っ込めた。

「わ、わりぃ! わりぃって! わざとじゃねえから!」

 おれはおそるおそる振り返り、頭を下げる。

 その瞬間、大平愛子の全身が、はっきりと視界に飛び込んできた。

 月光を浴びた肌は、ひとすじの傷もないほどなめらかで、全身がうっすらと光をまとっているみたいだ。夜のなかで黒く浮かぶ長い髪、きらりと光る瞳と白い歯。...

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