第571章

俺は短剣を握り締め、瑠璃と本田安奈に背後の巨石へ隠れるよう合図した。森を吹き抜ける風が急に冷え込み、足元の枯れ葉がカサカサと微かな音を立てる。どんな些細な物音でさえ、敵が忍び寄る足音に聞こえた。

緊張が頂点に達したその時、茂みの中からドサッと重い物が倒れる鈍い音が響いた。

息を殺してそっと側面に回り込むと、血まみれの人影が木の幹にもたれかかっているのが見えた。

血に染まった髪が乱れて顔を覆い隠し、身に纏う黒の戦闘服はボロボロに引き裂かれている。

「来ないで……」

掠れた声には警戒が滲んでいた。その人物がゆっくりと顔を上げた瞬間、俺の瞳孔が急激に収縮する。

——大平愛子だ!

口元...

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