第574章

今日はあまり薬草は集まらなかったが、大平愛子とティックを連れ帰れた。それだけで、ほかの何よりもうれしかった。

 集落に戻ると、夕日の残光が木造の小屋を柔らかな橙色に染めていた。胸の奥がじんわりと温かくなる。……家に帰ってきた、そんな感覚だった。

「大平愛子!」

 前谷鈴音が目を輝かせて駆けてくる。胸元で抱かれている二匹のウサギが、ぴょんぴょん弾んだ。

 そのまま大平愛子に飛びつき、思いきり抱きしめる。嬉しさのあまり、目尻には涙が光っていた。

「わたし、もう――」

 縁起でもない言葉が喉まで出かかったところで、前谷鈴音は必死に飲み込む。

「ちょ、ちょっと! 痛いってば、鈴音。潰れ...

ログインして続きを読む