第594章

「……今の、なにの音?」と本田安奈がふいにおれにたずねてきた。

おれは笑って肩をすくめる

「なんでもねぇよ。小鳥がひとつ、飛んでっただけさ。余計なこと考えんなって。ほら、男と女のいちばんいいところ、まだまだ続きだろ?」

おれが本田安奈と取りとめのない会話を交わしているあいだにも、足もとで湯がぐらりと揺れた。意識を沈めると、精神力が蜘蛛の巣みたいに泉の底まで広がっていく。

左手側の変異獣が身をかがめ、喉の奥から唸り声をあげた瞬間、池の底を走る温泉脈が爆ぜた。灼けるように熱い湯が砕けた岩を巻き込みながら天へと噴き上がり、空中で一枚の水の幕へと姿を変える。

奴の鉤爪が水幕を裂いた刹那、お...

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