第633章 先史の遺民

白崎由美子は目を輝かせてナイフとフォークを手に取った。

「さっきまでぜんぜんお腹なんて空いてなかったのに、目の前に並んでるの、匂いだけでお腹鳴っちゃいそう~ いただきまーす!」

フォークでフォアグラをひと切れ刺して口に運ぶと、その表情が一瞬でとろける。

「口に入れた途端に溶けちゃう……さすがの名店クオリティね!」

前谷鈴音は給仕から受け取ったワイングラスを持ち上げ、赤ワインをゆるやかに揺らした。クリスタルの器の中で、暗い紅がとろりと流れ、ふくよかな果実の香りを放つ。

「この82年物のラフィット、美食と合わせれば、さすがにこの道中の疲れも少しは癒されるわね。あとは、わたしが作る料理と...

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