第660章 甘い罠

小出洋人がパーティーの開始を宣言すると、瑠璃の杯に満たされた酒がきらりと波打ち、使用人たちが列をなして珍味を運び込んでくる。鎏金のトレイが触れ合い、かすかな音を立てた。

安田真紀は茶碗を取り上げ、ふうと一口含む。立ちのぼる湯気が、目尻の朱砂のほくろをぼんやりと霞ませる。声にはどこか三分ばかりの気怠さが滲んでいた。

「海老原さんは蛇肉の効能にずいぶんお詳しいって、うかがってます。禁断の島で暴れ回っていた時も、きっといろいろな生き残り方を見てこられたんでしょうね、『各自が神通力を発揮する』ような」

指先で無意識に茶碗の縁の草模様をなぞる。その爪先を覆う鎏金のネイルガードが、蝋燭の火に揺れて...

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