第4章

サイレンの音は近づいてきていたが、今井綾香の方が速かった。

ピンクのランボルギーニが工業地区を切り裂くように走り去り、私は後に排気ガスだけを残していくのを、見ていた。警察がビルに殺到した頃には、彼女の姿はもうなかった。

「クソッ、本当に逃げられたのか」

森田誠がスマホを下ろしながら言った。

「いいわ」

私は窓から背を向けた。

「怯えた獣の方が、狩りやすい」

「西川凜音、あいつは君を殺そうとしたんだぞ。見つけ出して、あの録音データを――」

「彼女がいなければ、録音データなんて意味がない」

私はすでに次の一手を考えていた。

「それに、もっといい考えがある」

私は...

ログインして続きを読む