第5章

福田大輔が去った後、私はさらに一時間、桟橋に座って峰見湖に沈む夕日を眺めていた。

森田誠からの不在着信が一件。テキストメッセージが三件。どれも前のものより必死さが伝わってくる。

完璧だ。彼はもうパニックに陥り、すでに必死になっている。

町へ戻るのに車で四十分かかった。裁判所に到着する頃には、駐車場は森田誠の黒いセダンと数台の警備車両を除いて、ほとんど空っぽだった。

執務室へ行くと、彼は檻の中の動物のように部屋を歩き回っていた。私を見るや、彼の表情に安堵の色が広がる。

「よかった、無事だったんだな。今朝からずっと気が気じゃなかったんだ」

彼は私を腕の中に引き寄せ、私はそ...

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