第4章 それぞれの生活を大切にしよう!

夜が更け、桜が微風にそっと揺れている。

千葉風は黙ったまま、貴族学院の静かな庭園を抜ける私を護衛し、木刀を無造作に肩へ担いでいた。少し離れた桜の木の下、見慣れた人影が待っている。肩にはらはらと舞い落ちた数片の桃色の花びらが、まるで緻密に構図を練られた絵画のようだ。

藤原安。

私の心臓が、一瞬にして跳ね上がった。彼はそこに立ち、月光がその身に冷ややかな銀の輝きをまとわせ、眼鏡の奥の眼差しは刃のように鋭い。私は思わず足を止めた。私の躊躇いに気づいた千葉風が、低く囁く。

「水原お嬢様、もう下がってもよろしいでしょうか」

「ええ、行きなさい」と私は小声で言い、彼の去りゆく背中を...

ログインして続きを読む