第5章 出発の準備

朝陽の金光が庭園の桜の木を抜け、まだらに私の着物へと降り注ぐ。

私は庭園で静かに茶を嗜み、昨夜の藤原安との対峙で乱れた心を鎮めようとしていた。

皇室の制服を纏った使者が早足でやってきて、恭しく金の箔押しが施された紙片を差し出した。「水原さん、藤原安殿下より招待状をお預かりしております」

私の手は微かに震えながら、その紙片を受け取った。そこにはただ一行、短い筆跡があるのみだった。『祈願山春祭り、必ず来られたし』

どう返事をしようかと思案していると、庭園の石畳から聞き慣れた足音が聞こえてきた。藤原安が正式な皇族の礼服を身に纏い、複雑で深みのある眼差しを向けている。

「玲文、...

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