第6章 既定の運命に向かって進む

藤原安が突然姿を現した。私と千葉風が荷物をまとめているのを、その視線が射抜く。

空気が一瞬で凍りつき、ただ桜の木の下で風鈴がちりんと鳴る音だけが響いていた。

「どこへ行くつもりだ?」

藤原安の声は氷雪のように冷たい。彼は一歩ずつ近づくと、私が千葉風の肩に置いていた手を掴み、乱暴に引き剥がした。

「しばらく別荘で暮らそうと思っただけ。ここは……学園に近すぎるから」

私は必死で平静を装った。

藤原安の視線が、私たち二人の間を行き来する。その口元には、嘲るような笑みが浮かんでいた。

「水原玲文、昔から嘘が下手だ」彼は地面の荷物を指差す。「これはどう見ても、長旅の支度だ...

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