第10話

私のその言葉に、木尾翔太の顔に悲しげな色が浮かんだ。

彼はバラの花を私の胸に押し付け、「今夜、また会いに来るよ」と約束した。

私が答える間もなく、彼はそのまま立ち去った。

彼の背中を見つめながら、私の心には何の波紋も立たなかった。

なぜなら、彼の第一選択肢はいつも佐藤茜だからだ。

たとえその時、佐藤茜が彼の携帯電話の電源を切ったとしても。

それでも彼は彼女を責めることを選ばなかった。

たとえ今、私に離婚しないよう頼もうとしても。

それでも彼は、佐藤茜の一言で彼女のもとへ駆けつけるだろう。

木尾翔太、私たちの間にある問題は、決して父の死だけではない。

翌朝、木尾翔太は大きな袋いっぱいの朝食を持っ...

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