第2話
そう、木尾翔太はどうして来なかったのだろう。
私の夫として、彼は私のそばにいてくれるべきだった。
私の父の婿として、なおさら葬儀に参列すべきだった。
なのに、彼は来なかった。
私は無感覚にまた電話をかけたが、向こうは相変わらず通話中だった。
電話がつながらないのを見て、叔母は腹を立て、自分の携帯電話を取り出して直接彼に電話をかけた。
向こうは即座に出た。
「どうしたの?なぜ義父さんの葬儀に帰ってこないの?」
しかし、電話に出たのは相変わらず佐藤茜だった。
父が亡くなったという叔母の話を聞いても、佐藤茜はまだ信じていない様子で、逆に叔母を問い詰めた。
「あんた、またどこの女なの?そんな意地悪なことで翔太に連絡するなんて。翔太と話したくて気が狂ってるんじゃないの!」
そう言うと、彼女はすぐに電話を切った。
叔母は腹を立てて眉をひそめ、大声で罵り始めた。
親友の伊浦瑛子も駆けつけてきて、木尾翔太に対して呆れた様子で言った。
「あなたの旦那さん、なんで帰ってこないのよ!こんなことを全部あなた一人で処理させるなんて、頭おかしいんじゃないの!」
「あいつ、男として何様だ!」
伊浦瑛子の騒がしい声が耳元で響き、私は虚ろな目で空を見上げた。
ふと、木尾翔太が旅立つ前に、友人たちと旅行に行くと言っていたことを思い出した。
私も連れて行ってほしいと頼んだのだが、彼は「親友同士の集まりだから、君を連れて行くのは気まずい」と言った。
私も自分を納得させていた。確かに、親しい友人たちの集まりに、私のような見知らぬ人を連れて行くのは少し気まずいだろうと。
まさか佐藤茜まで同行しているとは思いもしなかった。
出発前、木尾翔太は父の手術当日に必ず戻ると何度も約束していた。
しかし、予期せぬ出来事があまりにも突然に起こり、父が急に重篤になるとは思ってもみなかった。
だが、佐藤茜が木尾翔太のそばにいるとは、さらに思いもしなかった。
ましてや、木尾翔太と連絡が取れず、父が救命措置に間に合わず亡くなってしまうとは。
一瞬にして、無力感が全身を駆け巡った。
私は顔を上げて外を見た。
今の空は重く、冷たく、まるで私の心境そのものだった。
頭の中に、かつて父が私にしてくれた数々の思い出が浮かんだ。
ついに、鼻の奥がツンとし、一粒の涙が外の雨粒と共にこぼれ落ちた。
「父さんはもういなくなった。これからは、無条件に私を愛してくれる人はもういない」
