第4章
ファミレスは国道14号線を二十分ほど下ったところにあった。運転手がコーヒーを啜りに立ち寄り、地元の人間が噂話に花を咲かせる、そんな場所だ。
良子が車を乗り入れ、私もその隣に停めた。私たちは連れ立ってドアへ向かった。彼女がドアを開け、私を通してくれた。
店内には客が数人、まばらに座っていた。大半は作業着姿の年配の男たちだ。私たちが入っていくと彼らは顔を上げたが、良子の制服を目にすると、すぐに食事へと戻った。
私たちは窓際のボックス席に座った。良子が片側に滑り込み、私がその向かいに腰を下ろす。
店員さんがやってきた。中年の、どこか疲れた様子の女性だ。名札には「土屋佳代」とある。
「原野さん」彼女は言った。「いつもの?」
「頼むわ。彼女にも同じものを」
佳代は頷いて立ち去った。
私は良子を見た。「いつものって?」
「ベーコンエッグセット、ドリンクはコーヒーで」良子は背もたれに寄りかかった。「洒落たもんじゃないけど、腹の足しにはなる」
空腹ではなかった。胃が締め付けられるように痛い。何かが腹の中でとぐろを巻き、時を待っているような感覚だった。
最初にコーヒーが運ばれてきた。熱く、黒く、苦い。私はマグカップを両手で包み込み、その熱が掌に染み込んでいくのを感じていた。
良子は自分のコーヒーにクリームを入れ、ゆっくりとかき混ぜた。
「あなたは、ある人を思い出させるわ」しばらくして彼女が言った。
「誰を?」
「昔知っていた女の子よ。強くて、賢くて……誰の指図も受けない子だった」
私は何も言わなかった。彼女が私に何を求めているのか、わからなかったからだ。
「あの子は結局、刑務所に入ったわ」と良子は付け加えた。「義理の父親を殺したの。殺されて当然の男だと言っていた。そうだったのかもしれない。でも、彼女が人を殺したという事実は変わらなかった」
私は彼女を見据えた。「私たちが似てるって言いたいの?」
「いいえ」良子はスプーンを置いた。「これから話すのは、私が考えた事件の真相よ」
胸が締め付けられる。私はコーヒーを置いた。「続けて」
良子はジャケットの内側に手を伸ばし、小さな手帳を取り出した。斎場でも、牧場でも持っていたあの手帳だ。彼女はそれを開き、ボールペンをカチリと鳴らした。
「この仕事をもう十五年やってる」彼女は言った。「人を見る目は養ってきたつもりよ。行動のパターンを見抜き、誰が嘘をついていて、誰が本当のことを言っているかを見極める術もね」
彼女は私を見た。その眼差しは揺るぎなく、静かだった。
「あなたは嘘が上手いわ、月菜。でも、十分じゃない」
料理が運ばれてきた。佳代がベーコンエッグセットの皿を二つ置く。良子が言った通りだ。
私たちはいずれも、料理に手を付けようとはしなかった。
良子は手帳をパラパラとめくり、あるページで手を止めた。そして語り始めた。
「ある物語を聞かせてあげるわ、月菜。
あなたが十歳だった頃から始まる物語よ。
あなたのお母さんが亡くなった。嵐の夜に階段から落ちて、コンクリートで頭を打ったのね。警察は事故として処理した。誰もがそれを信じたわ。
あなた以外は。
あなたは知っていた。父親が洋子と不倫関係にあったことを。彼女が妊娠していたことを。あなたのお母さんがそれに気づき、彼を問い詰めていたこともね。
そしてあなたは知っていた――あるいは疑っていた。父親がお母さんを邪魔に思い、消えてほしいと願っていたことを。
でも、あなたはただの子供だった。たったの十歳よ。誰があなたの言葉を信じる?
だからあなたは黙っていた。半年後に父親が洋子と再婚するのを、ただ見ていた。彼が洋子を家に連れ込むのを。あなたのお母さんの家にね。
その時、あなたは学んだのよ。この世界は『小さな女の子』のことなんて気にも留めないってことを。
世界が気にかけるのは息子たち。跡取り。家名を継いでくれる男の子だけだってね。
洋子が光太郎を産んだ。父親は有頂天だったわ。ついに、待ち望んでいた息子を手に入れたんだから。牧場を継ぐべき存在。価値のある存在をね。
そしてあなたはどうなった? あなたは透明人間になった。
父親は光太郎に乗馬を教えた。町へ連れ出し、近所の人たちに見せびらかした。『この牧場はいつかこの子のものになる。俺が死んだら、この子がここを守るんだ』なんて言いながら。
あなたはそれを聞いていた。毎日、毎日ね。
『この牧場は光太郎のものになる』
あなたのものじゃない。彼のためのものだと。
あなたが光太郎の何倍も働いていたなんてことは、どうでもよかった。あなたが土地の隅々まで知り尽くしていることも。柵を直すのも、仔牛を取り上げるのも、この辺りのどの男より上手くできたとしても、何の意味もなかった。
そんなことは何一つ重要じゃなかった。
あなたが『息子』じゃなかったから。
だから、あなたは怒りを押し殺すことを覚えた。父親に無視されても笑顔を作り、光太郎が乗馬のレッスンを受けている間、馬房の掃除を命じられても『はい』と答えることを覚えた。
けれど、心の中であなたは計画を練っていた。
観察し、待ち続け、彼らの日課を、弱点を、秘密を学んでいった。
そしてある日、あなたは掴んだ。
どうやってかは知らない。立ち聞きしたのか、洋子の持ち物を漁ったのか。ともかく、あなたは知ってしまったのよ。光太郎が、父親の実の子ではないという事実を。
それで全ての景色が変わったでしょう?
父親は七年もの間、他人の子を育ててきた。すべてを与えてね。愛情も、関心も、牧場の跡継ぎという約束も。
それが何のためだった? ただの嘘のためよ。
あなたは好機と見た。
光太郎を納屋へ誘い出したのね。『かくれんぼしよう』と言って。二階の飼料置き場に隠れるように唆した。
あの子はあなたを信じていた。いつだってそうだった。
そしてあなたは、落とし戸をロックした。
あの掛け金の不具合は、誰もが知っていたわね。父親は何年も前から直そうとしていた。でも決してやらなかった。光太郎のことで忙しすぎて。未来の計画で忙しすぎて。
光太郎のものになるはずだった未来のためにね。
あなたはあの子をそこに置き去りにしたのよ、月菜。暗闇の中に。水もなく、逃げ場もない場所に。
あなたはあの子を見殺しにした。
三日間。あの子が息絶えるまでにかかった時間よ。
三日間、あの子は落とし戸を爪で引っ掻き、助けを求め続けた。誰かが来てくれると信じてね。
でもあなたは行かなかった。ただ待っていた。いずれ圭助が死体を見つけるだろうと知っていたから。
そして発見された時、あなたは悲劇の姉を演じた。ショックで口もきけず、打ちひしがれて涙も出ない姉をね。
でも、それだけじゃ終わらなかった。
父親と洋子はまだ生きていた。主導権を握っていた。牧場の名義は父親のままだったから。
だからあなたは種を蒔いた。光太郎の出自の証拠を突きつけたのか、噂を吹き込んだのか。あるいはただ、二人が自滅し合うのを眺めていたのか。
そして彼らはその通りになった。
罵り合い、責任を押し付け合い、互いを引き裂いた。
機が熟した時、あなたは火蓋を切った。
二人が眠るのを待って、台所のガス管を開けたのね。自分が寝泊まりしていた従業員住宅の窓は、確実に開けておいた。自分が生き残るために。
そうしてあなたは立ち去った。
三つの遺体。三週間。
そして今、すべてはあなたの手の中にある。
牧場も、土地も、未来も」
良子は手帳を閉じ、私たちの間のテーブルに置いた。
店内は静まり返っていた。冷蔵庫の唸るような低音。台所から聞こえる皿の触れ合う音。他の席から漏れる低い話し声。
手が震えていた。私は両手をテーブルに押し付け、震えを止めようとした。
良子は私を見ていた。待っていた。
「それが、私の推理よ」彼女は言った。
私は彼女を見つめ返した。喉が張り詰めている。胸が何かに押し潰されそうだ。
良子が身を乗り出した。その視線は私から離れない。
「私が怪物だとでも言いたいの」私は言った。声は低く、落ち着いていた。だが、手はまだ震えている。
「生存者だと思っているわ」良子は言った。「でも、生き残ったからといって無実とは限らない」
「証拠はないはずよ」
「刑事の勘がある」
「そんなの、証拠にはならない」
「ええ」良子は認めた。「でも、問い続けるには十分よ。監視し続けるにもね。あなたが一つだけ見落とした何か――それを探し続けるには十分だわ」
奥歯を噛み締めた。怒りが込み上げてくるのがわかった。熱く、鋭く、危険な怒りだ。
彼女は何も知らない。当てずっぽうだ。様子を探っているだけだ。
だが、彼女は核心に迫っていた。あまりにも近くに。
良子は長い間、私を凝視していた。やがて彼女はシートに背を預けた。
「あなたが殺したのよ」彼女の声は抑揚がなく、決定的だった。「認めなさい」
