第17章 身をもって示す

村田隆が口を開いた。唇の上の水滴が、キラキラと光って、まるで熟したチェリーのように、摘み取られるのを待っているようだった。

「現行犯、不倫現場の証拠押さえ」

この言葉を聞いた瞬間、村田隆が本気だと分かった。

突然、心の重荷が軽くなった。よかった、私は浮気相手じゃない!

村田隆はため息をつき、その目の奥には消えない悲しみが宿っていた。

私は彼を慰めようとした。

「村田社長、恋の花は一輪だけじゃない。あなたの地位と容姿なら、通りに立つだけで、あなたを追いかける人が海外まで列を作るでしょう……」

村田隆は私の不器用な慰め方に少し笑ったようだ。彼は口角を少し上げた。

「そうだね、世間...

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