第36章 村田お母さんの慰め

私の頭の中は真っ白で、目の前は暗闇に覆われていた。

このまま死んでしまえば、この最悪な人生にさよならできるのに、と思ったこともある。

でも結局、死ぬことはできなかった。目を開けると、杉本健一が心配そうな顔で私のそばに立っていて、同じく心配そうな医師や看護師たちもいた。

「安野さん、具合はどうですか?」

口を開こうとしたが、声が出せないことに気づいた。

医師はため息をついた。

「ストレス性のトラウマです。安野さんは失語症になってしまいました」

杉本健一は医師を見つめ、声に切迫感を滲ませた。

「どうすればいいんですか?」

医師は首を振った。

「こういうケースでは、本人が回復し...

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