第4章 母が入院する

私の心が「ドキッ」と鳴り、不吉な予感が頭を直撃した。

「私は、いえ、あなたは誰ですか？母の携帯がなぜあなたの所に？」

「持ち主がスーパーで突然倒れたんです。今、国立病院に搬送されました。急いで来てください！」

頭の中が真っ白になり、私はすぐに道路に飛び出してタクシーを止めた。

「運転手さん、国立病院へ！」

運転手は最初文句を言いかけたが、私の取り乱した様子を見て、言葉を飲み込んだ。

国立病院に着くと、体中の痛みを無視して救急室へと駆けていった。

父が救命室の前で焦りながら行ったり来たりしていた。

「お父さん、ママはどう？」

骨折しても一滴の涙も流さない強い父が、今は目を赤くして涙をためていた。

「お前のお母さんはまだ救命中だ。医者の話では、脳に腫瘍があって神経を圧迫している。救命は難しいと...」

父の口が開いたり閉じたりするのを見ながら、頭の中で轟音が響くだけだった。どうしてこんなことに？

昨日家を出る前、母はまだ冗談めかして私の頭を叩きながら、夜遅く帰ってくるなと言っていたのに。

今日どうして救命室なんて...？

私の様子がおかしいのを見て、父は急いで私の手を取り、椅子に座らせた。

「心配するな、娘。お前のお母さんは悪いことなんて一度もしたことがない、いつも善良だ。きっと大丈夫だ！」

私は茫然と頷き、全身が恐怖に包まれ、冷や汗が止まらなかった。

突然、鼻先に見覚えのある匂いが漂ってきた。

顔を上げると、人々に囲まれた村田隆の姿があった。彼はあまりにも輝いていて、群衆の中でも一目で見つけられる存在だった。

私の視線があまりにも強かったのか、彼がこちらを向いた。

私は素早く頭を下げ、体を横に向けて隅の方へ隠れた。

今朝彼は自分の前に現れるなと言ったばかり。もし見られたら、その結果は想像したくもなかった。

幸い、村田隆の足取りは止まることなく、私の前を通り過ぎていった。

私はほっとすると同時に、少し寂しさも感じた。

しかしその寂しさは長く続かなかった。医師が救命室から出てきて、私と父はすぐに駆け寄った。

「先生、状況はどうですか？母は命の危険は脱しましたか？」

「安心してください。お母様は命の危険は脱しましたが、脳の腫瘍はできるだけ早く手術が必要です」

「でも心配いりませんよ。村田社長がさっき特別に話を通してくれました。数日中に脳外科の最も権威のある専門家がお母様の手術に来ることになっています」

この言葉を聞いて、私と父は呆然とした。

村田社長って、村田隆？

「それに手術費についても心配いりません。村田社長が全額負担すると」

私はますます混乱した。村田隆は私に会いたくないと言ったのに、なぜこんなに助けてくれるのだろう？

しかしすぐに、そんなことを考える余裕はなくなった。

母の手術費は心配なくなったが、手術後はICUに完全に危険が去るまで入院し続ける必要があった。

ICUは一日20万円もかかる上、専門の看護師を雇わなければならない。

これらの費用は、私のような一般人には到底負担できるものではなかった。

それに、村田隆を追跡するために高額な情報を買ったせいで、貯金はすでに底をついていた。

今、私の手元にある唯一のお金は、村田隆がくれた2000万円の小切手だけ。

小切手を換金することも考えなかったわけではないが、取り出すたびに村田隆の冷たい表情と彼の言葉が頭に浮かんだ。

私はどうしても意地を張りたかった。