第44章 ケチな安野恭子

私が死んでも思わなかった。村田隆がまさか病院に現れるなんて。ということは、私が先ほど言ったことを、きっと全部聞いていたに違いない!

そう思うだけで、私の顔は熱くてたまらなくなった。

「あなたこそケチよ。まさか自分の心の中に、元カノのための場所を残しておくつもり?」

以前なら、村田隆の前でこんなに図々しく振る舞う勇気なんて、絶対になかっただろう。

村田隆は目を細め、前に出て私の肩を抱いた。

「村田奥さんの言う通りだ。心はそんなに小さいんだから、誰にでも場所を残せるわけがないだろう?」

そう言いながら、彼は顔を上げて中川瑶を見た。

「中川さん、今日は時間があるかな?俺たちから食事に...

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