第5章 医療費を調達する

しかし、現実はすぐに私の頬を強く打ち、「頑張っても飯は食えない」と教えてくれた。

家に帰った後、私は父と一緒に家の全財産を集計してみた。

私たちはごく普通の家庭で、両親ともに給料取りで、汗水流して稼いだお金だった。

何年も質素に暮らし、やっと1000万円ほど貯めることができていた。

しかし、これだけでは母の今後の治療やリハビリにはとても足りない。

家を売れば、何とかなるかもしれない。

「娘よ、親として申し訳ない。本来これは全部お前の嫁入り資金として貯めていたものなのに、今はもうなくなってしまった」

父の白くなった髪を見て、涙がこみ上げてきた。

部屋に戻ると、私は自分を強く殴りつけた。

あのクズ男にこだわらなければ、自分の貯金を全部使い果たすこともなかった。

今や家まで売らないと母の治療費が払えず、両親を家なき者にしてしまう。

今は仕事も失ってしまった。今一番大事なのは、家族を養える仕事をすぐに見つけることだ。

翌日早朝から履歴書を片っ端から送ったが、半日経っても返ってくるメールはほとんど断りばかりだった。

イライラしながら頭をかいた。このままではいけない。もう休んでいる場合ではない、すぐにお金を稼がなければ。

結局、家の近くのレストランでウェイトレスのバイトをしながら、履歴書を送り続けることにした。

正直なところ、私は両親の一人娘として、甘やかされて育ってきた。

初めてウェイトレスをするにあたって、少し面子が立たなかった。

会計の時、操作が遅すぎてお客様に散々怒鳴られた。

涙が目に溜まったが、ただ頭を下げて謝るしかなかった。

何とか一日を終え、面会時間が終わる前に家に戻り、母の着替えを用意して持っていこうと思った。

家に着くと、灯りがついておらず、真っ暗だった。

「お父さん」と二度呼んでみたが、返事はなかった。

不安が胸に広がり、明かりをつけて家中を探したが、父の姿はどこにもなかった。

これはおかしい。父は夕方に一度家に帰ると言っていたはずだ。通常なら五時に仕事が終わるから、この時間にはもう家にいるはずなのに。

携帯を取り出して父に電話をかけたが、何度かけても出なかった。

直感で、父に何かあったと感じた!

靴も履かずに素足で家を飛び出し、父の帰宅ルートを辿った。

家から300メートルほどの路地の入り口で、人だかりができているのが見え、救急車も来ていた。

人ごみの隙間から、地面に動かない中年男性が横たわっているのが見えた。かなり重傷のようだった。

全身の血が逆流するような感覚で、ぼんやりとした意識のまま路地の方へ歩いていった。

「あの、奥さん、医師が患者を救命中です。そこまでにしてください!」

看護師が私を止めた。私は口を開き、全力で喉から声を絞り出した。

「見せてもらえませんか。この道は父が帰り道に必ず通るところで、今日はまだ帰ってきていないんです」

看護師は後ろを振り返り、隣の医師が頷くのを見て、ようやく私を通してくれた。

地面に横たわる男性の前にしゃがみ込み、震える手で男性の顔を見た。

周りの世界が一瞬止まったように感じた。心臓が見えない大きな手で強く握りしめられ、息ができないほど苦しかった。

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