第7章 母が亡くなる

私の心も苦しかったけど、今は崩れてはいけないと分かっていた。お母さんはまだICUにいるんだから。

お父さんを慰めた後、部屋に戻ってベッドに横になったけど、どうしても眠れなかった。

村田隆からもらった小切手はまだ財布の中にある。これを換金すれば、すべてが解決するのに。

小切手を取り出し、指先でなぞっていた。

思いに耽っていたその時、突然携帯が鳴り響いた。

電話に出ると、まだ何も言わないうちに、向こうから興奮した女性の声が聞こえてきた。

「安野さん、早く来てください!お母さんが危ないです!」

頭が真っ白になって、よろよろと外に走り出した。私の様子を見たお父さんも何かを察したのか、一緒について来た。

どうやって病院に着いたのか覚えていない。着いた時には、お母さんはすでに白い布に覆われ、部屋から運び出されていた!

「ご家族の方、お悔やみ申し上げます」

私は駆け寄って、医師の腕を揺さぶり、もう一度お母さんを助けてくれと頼んだ。あのおばあさんは生きることが大好きだったのに、こんなふうに死ぬなんてありえない!

医師は私を見て、首を横に振った。

「本来は症状が安定していたのですが、お母様が目を覚ました後、あなたたちに迷惑をかけたくないと思ったのか、看護師が席を外した隙に人工呼吸器を引き抜いて、頭を壁にぶつけてしまったのです」

お母さんの遺体が運ばれていくのを目の当たりにして、全身から力が抜けるように床に膝をついた。

「あぁぁ!誰か倒れました!」

母親を失った悲しみから這い上がれないうちに、背後から驚愕の叫び声が聞こえた。

必死で振り返ると、ずっと後ろにいたお父さんがその場に崩れ落ちていた。

私の瞳孔が縮んだ。

「先生、助けてください!」

お父さんも救急室に運ばれ、上に点いた赤いランプを見つめながら、私は完全に放心状態になった。

一日のうちに母を失い、父も倒れた。こんな不幸がなぜ私の家に降りかからなければならないのか、理解できなかった。

私の両親はとても優しい人たちで、貧しい人を見れば、お金やお米を届けていたのに。なぜこんな優しい人たちに報いがないのだろう?

救急室の前のベンチに座り、どれくらい時間が経ったか分からない中、一枚のティッシュが私の前に差し出された。

顔を上げると、村田隆の整った顔が目に入った。

「拭きなさい。みっともないよ」

ティッシュを受け取り、お礼を言った。

「前の助けありがとう」

しかし、さよならを言えば他人になると約束したはずの彼が、わざわざ私の隣に座るとは思わなかった。

「当然だよ。俺が寝た女が、そんな惨めな姿でいるのを見たくないからな」

私たちはそうしてベンチに座り、この短い時間だけ、互いの身分の不釣り合いを一時的に忘れた。

「どうしてここにいるの?」

彼は村田家の権力者なのに、何度も病院で私と鉢合わせるなんて。

偶然だとは思えない。

「俺のことを調べた時、この病院が俺の家のものだって聞かなかったのか?」

村田隆は皮肉な笑みを浮かべ、目には嘲りが満ちていた。

恥ずかしさで頭を下げた。私が分不相応にも高嶺の花に触れようとして、クズ男に復讐しようとしていたなんて。

一瞬にして空気が気まずくなり、村田隆を見る勇気もなく、ただ救急室のドアに視線を固定した。

救急室のランプは一晩中点いたまま。東の空が白み始めるまで、やっとお父さんが運び出された。

私は急いで立ち上がり、駆け寄った。

「先生、父の状態はどうですか?」

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