第6章

冬花視点

大輔は、温かいミルクを注いだグラスを手に、主寝室のドアの前に立っていた。

オスカーの術後の経過は順調だったが、夜になるとどうにも落ち着きがなくなるようだった。冬花はほとんど毎晩、彼のそばで優しく歌を歌い、寝かしつけてやっていた。

部屋から、優しい旋律が流れてきた。

『小さな星よ、怖がらないで。いつもそばにいるから……。夜が過ぎれば、朝が来る。私たちは、ずっと一緒……』

大輔の手が激しく震え、グラスのミルクがこぼれそうになった。

この旋律……どこで聞いたことがあっただろうか?

壊れたダムのように、記憶が洪水となって押し寄せてきた。十年前、海都東の下町。荒...

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