25: 彼女は私たちのものです。

カーン視点

俺は野営地を見下ろす崖の上に立ち、胸の前で腕を組み、周囲をくまなく見渡していた。山々は静まり返り、風のわずかなそよぎさえ聞こえるほどだった。俺は静寂などまったく信用していなかった。いつ何時、何者かに忍び寄られるか分からないという意味だからだ。

我らの子――その腹はまだ小さいが、そんなことは関係ない。危険を冒すつもりは毛頭なかった。あの子のためにも、そしてまだ生まれぬ命のためにも。

数歩後ろにはエンゾが立っていた。ポケットに両手を突っこみ、表情は穏やかだったが、彼から波のように放たれる緊張感は感じ取れた。

「また動き出したぞ」エンゾが呟く。村から続く小道の方を指差そう...

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