53: 彼を信頼してください。

カラ視点

テントの中はハーブと、外の小さな焚き火から流れてくる煙の匂いがした。今まで気づかなかったけれど、私が心の底で求めていた心地よい香りだった。私は毛布の上でそっと身じろぎした。隣にあるザイオンの温もりを感じ、彼が本当にすぐそばにいることを確かめるため、もう一度手を伸ばす。

「ねえ」私は届く範囲で彼を優しくつつきながら、口火を切った。「ベインのこと、ずっと考えてるの」

ザイオンはすぐにこちらを向いた。私の言葉が称賛なのか、心配なのか、それともまた不満なのかを読み取ろうとするかのように、目を細めている。「それを聞いておきたいかな?」彼の声は数分前に昼寝から起きたばかりでまだざらついてい...

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