第3章

月曜の朝、九時。中央通りにあるコーヒーショップは、子供たちを学校に送り届けた母親たちでごった返していた。皆、揃いも揃ってアスレジャーウェアに身を包み、ラテを片手にしたその姿は、さながら軍団のようだ。

いつもの角のテーブルに、高橋梨沙の姿を見つけた。

私が向かいの椅子に滑り込むと、彼女は開口一番こう言った。

「ひどい顔ね」

「どうも。世の女性が一番かけてほしい言葉だわ」

そう軽口で返すと、梨沙の表情が和らいだ。

「静香、ごめん。もう何週間も言うべきか迷ってたの。でも、昨日の試合の後じゃ……」

私は冷え切った指先を温めるように、コーヒーカップを両手で包み込んだ。

「聞かせて」

「たぶん、何でもないことよ。ただ……涼介さんと綾子先生の、お互いを見る目がね。彼がサイドラインに近づいた時の、彼女の顔、パッと輝くの」

梨沙は一旦言葉を切り、私の顔色を窺った。

「それに、真理子さんが先週の火曜日にカフェで二人を見たって。二人きりで」

火曜日。涼介は、隣町で投資家と会うと言っていたはずだ。

「いつから」

かろうじて囁きと呼べるほどの声しか出なかった。

「わからない。でも静香、他のお母さんたちも噂し始めてる。私たちですら気づいてるってことは……」

サッカーマザーたちの監視網に一度かかってしまえば、その秘密はとっくの昔に白日の下に晒されているも同然だ。

中村杏里のリビングは、彼女の洗練された趣味と、それ以上に上質なワインの聖域だった。

月一回の読書会は、杏里が自ら修復したというアンティークのコーヒーテーブルを囲んで開かれる。今月の課題図書は――皮肉にも――夫婦間の欺瞞をテーマにしたベストセラー小説だった。

しかし、誰も本のことを本気で話してはいなかった。

「新しい門出といえば」

杏里が皆のワイングラスを満たしながら言った。

「青木綾子先生の新しいお住まい、もう誰か見た? 川の見える眺めですって!」

夏目真理子が、危うくワインを噴き出しそうになる。

「教師のお給料で? よっぽど昇給したのかしら……それか、気前のいいパトロンでもついたとか」

部屋が、しんと静まり返った。

「きっと、ただお金の管理が上手なのよ」

私は無邪気を装って口を挟んだ。他の女性の成功を素直に称賛する、貞淑な妻を演じながら。

「お金の管理ですって」

三好佳代が鼻で笑った。

「静香、星見町の家賃相場、知ってる? 最低でも三十万はするわよ。よっぽどの高給取りでもない限り……」

月三十万。私の頭はすぐに、涼介が最近口にしていた「事業拡大」のための経費へと飛んだ。クレジットカードの明細で目にした、用途不明の項目。

銀坂区のコーヒーハウスは、高級エスプレッソと旧家の資産の匂いがした。友人の杉山玲奈が向かいに座り、彼女のノートパソコンには、我が家の食費一年分にもなりそうな不動産情報が表示されている。

「それで、涼介の最近の慈善活動はどう?」

私は努めてさりげなくカプチーノをかき混ぜながら尋ねた。

玲奈は笑った。

「涼介さん、最近はスポーツ関連の篤志家として有名よ。青少年プログラムにとても寛大なんだから」

「それが私の夫なの。いつも地域社会のことを考えてるのよ」

「ここだけの話だけど」

玲奈は声を潜めた。

「サッカーのコーチングにそこまでお金をかけるのは……ビジネス目的だとしても、ちょっとやりすぎじゃないかしら。だって、この四半期だけで三百万よ?」

三百万。コーヒーカップを持つ手が、微かに震えた。

「それに最近、星見町の物件にとても興味を持ってるの。『遠方からのクライアント用』に賃貸物件はないかって、しきりに聞いてくるわ」

玲奈の表情が、すべてを察したようなものに変わる。

「遠方からのクライアントっていうのも妙な話よね。普通はホテルを好むものじゃない」

土曜の朝、十一時。またしても中央通りのスターバックス。だが今回は、誰かと会うためではない。狩りのためだ。

涼介は十時半に家を出た。「クライアントと商業物件の簡単な内見」だと言い残して。しかし、彼のトヨタはコーヒーショップの前に停まっており、窓越しに、角のテーブルに座る彼の姿が見えた。

青木綾子と一緒だった。

私は通りの向かい側の車に滑り込み、バックミラーを完璧な角度に調整した。彼らはただ仕事の話をしているのではなかった。青木綾子が身振り手振りするたびに、ティファニーのブレスレットがキラリと光を放つ。そして涼介は、まるで初デートに来たティーンエイジャーのように、テーブル越しに彼女の手を握っていた。

青木綾子が携帯を取り出し、彼に写真を見せている。この距離からでも、涼介が満足げに頷いているのがわかった。彼女は彼にアパートを見せているのだ。彼の『投資物件』を。

「新しい部屋、完璧だね。君は最高のものにふさわしい」

二人が連れ立って店から出てくると、開いた窓から涼介の声が滑り込んできた。

青木綾子は彼を見上げて満面の笑みを浮かべる。

「本当に良くしてくれるのね。こんなに素敵な場所に住めるなんて、夢にも思わなかった」

涼介は神経質そうに周りを見渡してから、身を乗り出した。

「ただ、約束してくれ……事を荒立てないよう、慎重に行動するって」

事を荒立てないように。まるで、私たちの結婚生活を組織的に破壊しているのではなく、ほんの些細な過ちを犯しているだけであるかのように。

土曜の夕方、八時半。星見町アパートメントは、この地域の贅沢の象徴として、星見川のほとりにそびえ立っていた。私は並木道を走り、青木綾子の車を追う。ヘッドライトを消し、心臓は肋骨を激しく打ちつけていた。

彼女の駐車スペースは明らかに指定されており、恒久的なものだった。そしてその隣には、防犯灯の下でぬらりと光る、涼介のトヨタ。

束の間の訪問ではない。仕事の打ち合わせでもない。彼は、ここに属しているのだ。

私は通りの向かい、古いカエデの木の影に隠れて車を停めた。三階のアパートの、床から天井まである大きな窓を通して、インテリア雑誌から抜け出てきたようなキッチンで動き回る二人のシルエットが見える。

青木綾子は、私がこの一週間ずっと探していた、夫のN大学のスウェットシャツを着ていた。涼介はコンロの前に立つ彼女の後ろに回り、その腰に腕を回すと、首筋にキスを浴びせている。

彼らは恋人同士に見えた。夫婦に見えた。それは、十六年間の結婚生活と子育てが、私たちを礼儀正しいだけの他人へとすり減らしてしまう前の、かつての涼介と私の姿だった。

携帯が震えた。涼介からのメッセージだ。

『プロジェクトで残業。待たずに寝ててくれ。愛してるよ』

私はそのメッセージと、彼らの完璧な愛の巣から漏れる温かい光を、ただ見つめた。私の金、三百万。他の女を抱く夫の腕。娘が目を輝かせて「綾子先生」と呼ぶ、その女。

私は返信を打った。

『私も愛してる。また明日ね、涼介』

暗い車の中で、私は自分の夫と、見知らぬ女が築いた家庭を見ていた。

エンジンを始動させ、人気のない通りを抜けて我が家へと車を走らせる。丁寧に刈り込まれた庭と、眠りにつく家族で満ちた家々の脇を通り過ぎていく。かつて自分のものだと思い込んでいた日常が、窓の外を静かに流れていった。

自宅のガレージに車を滑り込ませる頃には、私の決心は固まっていた。

調査の段階は、終わった。

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