第7章

窓から、渡辺涼介が機械的な手際の良さでトヨタに荷物を積み込んでいるのが見えた。

「静香」

彼がポーチの下から声をかけてきた。

「まだ、話し合って解決できるはずだ」

私はポーチに出た。一睡もできなかった夜の間に、いつしか震えが止まっていた手で、コーヒーマグをしっかりと握っていた。

「私たちが話し合うべきなのは、離婚の条件だけよ。あなたの弁護士から、私の弁護士に連絡させて」

二階の窓の向こう、ガラスに押し付けられた美咲の青白い顔が見える。か細く、途切れ途切れの声が降ってきた。

「お父さん、晩ごはんには帰ってくるの……?」

涼介の平静さは、ほんの一瞬だけ崩れた。彼は娘を見...

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