第3章
三日が経過した。
修二はスマートフォンを手に取り、画面の上で指を素早く滑らせた。
『三日が過ぎた。もう帰ってきていいぞ。横浜の境界で神崎家の運転手が待っている』
彼は送信ボタンを押した。数秒が経過したが、画面は暗いままだった。
修二の眉間に皺が寄り、その表情に苛立ちが滲む。彼はさらにメッセージを、今度はボイスメッセージとして吹き込んだ。
『恵梨香、いい加減にしろ。自分の非も認められないなら、反省するまで西園寺にたっぷり躾けてもらっても構わないんだぞ。すぐに返信しろ』
私は彼のデスクの傍らを漂いながら、この状況をひどく滑稽に感じていた。
返信? 暗い地下牢で犬に引き裂かれ、血を流し尽くした無惨な死体が、どうやって彼にメッセージを返せるというのだろう?
数分後、ようやく彼のスマートフォンが震えた。だが、それは私からではなかった。発信元は、西園寺の翁だった。
修二は老人が口を開く前に電話に出ると、冷たく鼻で笑った。
「西園寺さん、どうしました? うちの意地っ張りな妻は、まだ折れないとでも?」
「神崎修二、さっさと自分のゴミを回収しに来い」西園寺の声には嫌悪感が滴っていた。
「お前の妻の死体が、うちの地下室で腐臭を放ち始めているんだ。館の床もあいつの血まみれだ」
修二は一瞬だけ動きを止めたが、すぐに嘲笑を漏らした。
「俺に迎えに来させるために、あなたまで巻き込んだんですか? 死んだふりなんて惨めな小細工、あいつくらいしか思いつきませんよ」
電話の向こうで沈黙が落ちた。
「あいつの生死などどうでもいいと言うなら、せめて腹の中にいる、すっかり形の出来上がった赤ん坊くらいは埋葬してやったらどうだ?」
私の魂が震えた。
私の赤ちゃん……彼に伝えることすら叶わず、私と一緒にあの暗闇の中で死んでいった子。
修二の顔色は、一瞬にしてどす黒く沈んだ。
「誰の種だか知れたもんじゃないでしょう」
「この茶番にあなたの部下を付き合わせるため、連中に体を売って孕みでもしたんじゃないですか」
ガチャッ。
彼は乱暴に電話を切った。
幽霊となった私の体は、絶望で打ち震えていた。
これが、私が長年愛し続けた男だというの? 彼は私の命を麗奈を喜ばせるための交渉材料にしただけでなく、想像し得る限り最も卑劣な言葉で、私の尊厳を泥で汚したのだ。
その時、再び画面が明るくなった。西園寺の翁から、高解像度の写真が送られてきたのだ。
背景は、私にとってあまりにも見覚えのある、あの廃棄された地下牢だった。
画面の中央には、ひどく損壊した死体が転がっていた。四肢は異様で不自然な角度に曲がり、ふくらはぎは骨が見えるほどに削ぎ落とされている。そして何よりも恐ろしいことに――腹腔全体が野蛮に切り裂かれ、内臓がすっかり抉り出されていた。
修二の呼吸が凍りついた。
だが、彼はすぐに息を吸い込み、冷ややかな笑い声を上げた。
「よくやるよ、恵梨香。親のすねかじりのお姫様が。俺を騙せるほどの合成写真を作るために、わざわざ気味の悪い死体まで掘り起こしてきたってわけか。死体の腹を割いてみせるなんて、本当に頭がおかしいんじゃないか」
再び電話が鳴った。西園寺の翁からの最後通牒だった。今すぐ死体を回収しに来い、と。修二はデスクの上からアストンマーティンのキーを鷲掴みにすると、扉を荒々しく閉めて部屋を飛び出した。
「馬鹿馬鹿しい! あいつが遊びたいなら付き合ってやるよ――俺が直接、その嘘を暴いてやる!」
私は彼の後を追った。
修二が扉を押し開けた瞬間、腐敗臭と血の匂いが壁のように彼を打ち据えた。部屋の隅々には、乾いて赤黒くなった血の跡がこびりついている。
彼の心臓が早鐘を打った。彼は思わず半歩後ずさりした。
息が詰まるような静寂の中、彼のスマートフォンが鳴り響いた。
「修二?」麗奈の甘く、儚げな声が霊安室に響き渡った。
「明日はT大のホームカミングデーよ。一緒に行かない? 大学時代の素敵な思い出を、二人でもう一度味わいたいな……あ、そういえば、恵梨香は謝って家に帰るって言ってくれた?」
私は、かつて私だったその腐りかけの肉塊を見つめ、それから修二の蒼白になった顔を見上げた。
その瞬間、残っていた最後の希望の欠片までもが粉々に砕け散った。私の魂は、あの空っぽで血塗られた部屋の中で、音のない金切り声を上げた。
「あいつのことは気にするな」修二は冷淡に言い放った。
「大学時代のことを思い出すと、いつも悲しくなるの」麗奈は小さくため息をついた。
「三年前、恵梨香が家族の緊急事態だなんて嘘をついて、あなたを東京から横浜に連れ戻したりしなければ、私たち、あの華やかな仮面舞踏会に一緒に行けたのに。あの伝説、覚えてる? あの舞踏会で一緒に踊った二人はソウルメイトになって、永遠に幸せになれるっていう……でも、彼女が全部台無しにしちゃった」
その言葉を聞いて、修二の表情が険しくなった。彼は冷たく鼻を鳴らすと、鬱憤を晴らすかのように、革靴で思い切り蹴り上げた。
ドスッ! 死体の切断された腕が宙を舞った。
その手には、見覚えのあるダイヤモンドの指輪が光っていた。
私たちの、結婚指輪だ!
