第100章 彼のことは知らない

誘拐犯たちは顔を見合わせ、絶望を貼りつけたような表情になった。

まさか――練りに練った誘拐計画そのものが罠だったなんて。しかも、いかにもか弱そうな令嬢が、最初から自分たちが来ることを知っていたとは。

「全員、捕まえて」

江島結奈が淡々と命じる。

使用人たちがどっと押し寄せ、取り押さえようとした、その瞬間。

誘拐犯のひとりがひらめいたように肩のあさぶくろを乱暴に引きずり下ろし、中の人間の喉元に刃を突きつけた。

「動くな!」男が怒鳴る。「近づいたら、こいつを殺すぞ!」

使用人たちの足が、ぴたりと止まる。

江島結奈の目が、わずかに細くなった。

あさぶくろの中の人間は小さく丸まり、...

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