第107章 彼女は追及しないと言ったことがある

たった一度だけ。

それから彼女は、そのまま前へ進み、庭園の奥へと姿を消した。

御堂斗真はその場に立ち尽くし、遠ざかる背中を見送った。喉の奥がきゅっと締まる。

「斗真」

御堂怜央の声が飛んでくる。

「ぼさっとして何してる? 江島さんに礼くらい言えよ。あの人が口を挟んでくれなかったら、今日お前は確実に誰かの機嫌を損ねてたぞ」

斗真は振り返り、江島結奈を見た。

陽の下に立つ彼女のスカートの裾には、汚れが数滴。けれど表情は淡々としていて、まるで何事も起きていないかのようだった。

斗真は口を開きかけた。何か言わなければと思うのに、どんな言葉も場違いに感じる。

結局、彼はただじっと彼女...

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