第112章 御堂柏木の前で江島結奈をダンスに誘うのが悔しい

「ほら、この一杯でお詫びさせて」彼女は真摯な口調で言った。「さっきは私が悪かったわ。あんな言い方、するべきじゃなかった。飲んで。飲んでくれたら――許してくれたってことにしていい?」

風見雪音は差し出されたグラスを見つめ、胡乱げに眉を寄せる。

「……これ、何のお酒?」

「シャンパンよ」江島結奈が言う。「さっき取ってきたばかり。まだ誰も口つけてない」

風見雪音はグラスを受け取り、鼻先に寄せてそっと香りを確かめた。

確かにシャンパンの匂いだ。変な異臭もしない。

顔を上げると、江島結奈が微笑んでこちらを見ている。その笑みは、薄いひびひとつないほど誠実に見えた。

それでも胸の奥の引っかか...

ログインして続きを読む