第127章 おばあちゃん、私は誘拐された

それから、彼は引きずられるようにして連れていかれた。

工場の建屋の扉が、もう一度――がちゃん、と閉まる。

足音が遠ざかり、サイレンもまた、薄れていった。

廃工場に残されたのは、江島結奈ひとり。

壁に背を預け、固く閉じた扉を見つめたまま、唇の端がゆっくり吊り上がる。

売られた?

捨て駒?

大西慶輔は、彼女を江島征司の「捨て駒」だと思い込み、ここに放り捨てて自滅させるつもりだったのだろう。

けれど――知らない。

江島結奈は、最初から誰の駒でもない。

手首をひねる。縄は、もう半分以上ゆるんでいた。

遠ざかったはずのサイレンが、今度は逆に近づいてくる。赤色灯の光が、廃工場の窓に...

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