第141章 体調が悪い

彼女は彼を見つめた。少し意外だった。この見知らぬ男に、まだ何か用があるのだろうか、と。

坂井礼司の顔には、ちょうどいい塩梅の照れくささが浮かんでいた。彫りの深い、角ばった輪郭にその表情が乗ると、不思議なほどのちぐはぐさが生まれる。

「北嶺市には来たばかりで。右も左も分からないんです」

そう言って、彼は軽く肩をすくめた。

「江島さん、地元の方ですよね? よかったら……この辺のこと、少し教えてもらえませんか」

江島結奈は彼を見ながら、頭の中だけを素早く回転させる。

坂井礼司。

H市・坂井家の後継者。

風見家の闇カジノを、破格で引き取った男。

そんな人物が、隣人の自分に「案内」を...

ログインして続きを読む