第145章 永橋正彦が帰ってきた

江島結奈は眉をひそめた。

「どういう意味?」

「つまり……」間宮航平は言葉を選ぶ。「誰かに片づけられたみたいで。全身傷だらけです。中には歯が折れてるのもいました。でも何も話そうとしない。自分で転んだ、の一点張りで」

江島結奈は黙り込む。

自分で転んだ?

転んで歯が折れる?

昨日、坂井礼司が口にした一言が脳裏をよぎった。

『もしかしたら明日、気が変わるかもしれませんよ』

胸の奥に、ざぶりと冷たい波が押し寄せた。

――彼が?

坂井礼司が?

十九の少年が、そんなことを……あり得るのか。

「江島さん?」受話器の向こうで間宮航平が呼ぶ。「この先、どうします?」

江島結奈は我に...

ログインして続きを読む