第168章 助け舟を出す

江島結奈は笑った。

「御堂さん、話が面白いですね。手の速さ? どういう意味ですか?」

御堂斗真は問いには答えず、淡々と言った。

「君の会社の下のカフェにいる。降りてこい」

通話はそこで切れた。

江島結奈は暗くなった画面を見つめ、鼻で笑う。

降りろって? 降りてやる。

何を言うつもりか、見せてもらおうじゃない。

今、上にいるのはこっちだ。御堂斗真――奪われ続ける側の気分は、さぞかし悪いだろう。

カフェは客が少なかった。

御堂斗真は隅の席に座り、目の前にはブラックコーヒー。濃いグレーのシャツに、襟元は少しだけ開いている。いつもよりラフに見えるのに、視線だけは相変わらず鋭い。

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