第172章 婚約がすでに解消されたことを知らないのか?

「もしもし――」

もう切られていた。

坂井礼司はスマホを握ったまま一瞬固まり、それから足早に玄関へ向かう。

闇カジノの件? 代理に投げればいい。

坂井エンターテインメントの件? 責任者に任せればいい。

どんな用事だって他人に回せる。けれど自分の恋だけは、どうしても自分で掴みにいくしかない。

それから数日間、坂井礼司は幸せだった。

とびきり幸せで。

生まれて初めてと思えるほど、満たされていた。

江島結奈が、ほとんど毎日のように彼と一緒にいてくれたからだ。

二人で会場を選ぶ。

坂井礼司はソファにもたれ、リビングを行ったり来たりする江島結奈を眺めていた。寸法を測り、人数を計算...

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